「年金代わりに新築ワンルームマンション投資はいかがですか」「節税対策になります」「ローンを払えば資産が残ります」こうした勧誘を受けて迷っている方からのご相談が、私のところには10年以上途切れずに届きます。
先に結論を書きます。投資用の新築ワンルームマンションは、価格構造上、契約した人が損をするようにできている商品です。私は大阪府知事認可の不動産会社を20年経営し、自分でも不動産投資をしていますが、新築ワンルームだけは絶対に買いません。
私自身は過去に数千万円を騙された経験があり、その後は投資副業サロン(コアメンバー)を12年運営してきました。宅建業者としても、数十人のワンルームマンション被害者と向き合っています。その立場から、なぜ「やめとけ」と言われるのかを、価格の中身・営業トーク・買ったあとに起きることまで順番に分解します。
不動産投資そのものを否定しているわけではありません。ただし、フルローン(頭金ゼロで全額を借りる買い方)の新築ワンルームを営業トークのまま契約するのは、私が知る限り最も負けやすいパターンです。
価格の25〜40%は業者の利益|2,000万円の中身を分解する
「買った瞬間に損」になる理由は感情論ではなく、価格の内訳にあります。仮に物件価格2,000万円のワンルームなら、中身はおおむねこういう構造です。
- 土地・建物の原価(実質価値):1,300〜1,500万円
- 開発業者の利益:300〜500万円
- 販売業者・営業マンのコミッション(販売報酬):100〜200万円
- 広告宣伝費:50〜100万円
- その他諸経費:50万円程度
つまり物件価格の25〜40%が業者の利益と諸経費の上乗せです。2,000万円で買った瞬間、市場価値は1,300〜1,500万円に落ちます。新車を買って乗り出した瞬間に中古価格になるのと同じ構造です。
この上乗せ分は、あなたの資産になりません。開発業者の利益と営業マンの報酬と広告費に変わっています。「業者の儲けのために存在する商品」と私が言い切るのは、この内訳を知っているからです。
新築ワンルームの5つの構造的問題
問題1|新築プレミアム家賃は続かない
新築時の家賃には「新築プレミアム」が上乗せされています。最初の入居者が退去したあと、次の入居者からは家賃が確実に下がり、10年後には新築時から15〜20%の下落が一般的です。それなのにローンの返済額は1円も下がりません。収支は最初から不利に組まれています。
問題2|表面利回りが低すぎる
新築ワンルームの表面利回り(年間の家賃収入÷物件価格)は現在3〜4%程度。ここから管理費・修繕積立金・固定資産税を引いた実質利回りは、ほぼゼロかマイナスになります。
問題3|ローン金利と家賃収入が噛み合わない
不動産投資ローンの金利は2%前後、表面利回りは3〜4%、実質利回りは0〜1%。実質利回りより金利が高くなった瞬間、毎月あなたの給料から赤字を補填します。「家賃でローンが返せる」は嘘です。
問題4|売ろうとすると元本割れする
購入直後から市場価値が25〜40%下がるため、5年以内に売ればほぼ確実に元本割れです。10年以上持っても購入価格の回収は困難。フルローンで買った人はローン残高が減らないので、売りたくても残債より安くしか売れず、売れば損が確定する状態に固定されます。これが、出口の見えない地獄です。
問題5|サブリース契約は保証ではない
「家賃保証30年」を掲げるサブリース契約(業者がまとめて借り上げて家賃を保証する契約)は、最初の数年だけ保証額が安定し、その後は業者の判断で大幅に減額される例が多発しています。契約書には「2年ごとの家賃見直し条項」などが入っており、長期の保証は事実上機能しません。
営業マンのセールストーク7つに、全部反論します
勧誘の言葉はほぼ固定されています。順番に潰します。
1.「年金代わりになります」
家賃収入で年金を補う想定ですが、実質利回りがマイナスなら、年金代わりどころか毎月の赤字補填が増えるだけです。
2.「節税対策になります」
不動産所得の赤字(減価償却を含む)を給与所得と損益通算する節税効果はあります。ただし戻る税金より物件価値の下落のほうが大きい。損が出ているから税金が戻るだけで、得をしているわけではありません。個別の税務は税理士か税務署に確認してください。
3.「インフレ対策になります」
不動産がインフレに強い理屈自体は正しいのですが、新築ワンルームは業者プレミアムが剥がれる過程で価値が下がり、インフレの恩恵を相殺します。
4.「ローン完済後は丸ごと資産になります」
35年後に完済しても、その時点の物件価値は購入時の30〜50%程度まで下がっている可能性があり、元本を回収できない場合もあります。
5.「サブリースで家賃保証されます」
前述のとおり、実質的な保証機能を持たない契約が多い。保証の言葉ではなく見直し条項を読んでください。
6.「人口が減っても都心は需要が残ります」
都心の賃貸需要が地方より安定しているのは事実ですが、新築ワンルームは価格が高すぎて、需要があっても利回りが取れません。
7.「経費で落とせるので実質負担は少ないです」
経費に計上できる範囲は限定的です。減価償却が終わる22年目以降は経費が大きく減り、所得税の負担が増えます。
生命保険代わりという口説き方についても書いておきます。1部屋だけ持つのは私も否定しませんが、生命保険の代わりが目的なら、もっと良い商品がいくらでもあります。そして2部屋、3部屋と「買わされる」と、近い将来に必ず大変なことになります。
業界のプロが聞いたら唖然とする、売り方の実態
2017年ごろ、新築ワンルームの販売攻勢が一気に強まりました。当時すでに供給過剰で値下がりは必至だったのに、猛烈な電話営業とセミナーで手当たり次第にセールスをかけていた。営業マンの嘘とハッタリはどんどん大きくなり、こんな言葉が飛び交っていました。
- 「新規営業をほとんどかけていないのに完売しました」
- 「立地の良さとコスパの高さで大人気、申込が殺到しています」
- 「手出しゼロのフルローンで買って、数年後に数百万円の転売益が出ると業界内では噂です」
人気が無くて大量に売れ残っているクズ物件を、こうやって売っていたわけです。特に最後の「業界内では噂です」は何なのか。そんなに儲かるなら販売業者が自分で全部屋買えばいい話です。大損する可能性が高い商品を、プロである不動産会社や経営者が「付き合い」以外で買うわけがありません。数年以内に数百万円儲かるのではなく、数百万円損するというのが正解です。
彼らのトークはメリットしか出てきません。このエリアは政府の特区に入っている、近くに大きな施設ができる、道路が拡張されて新駅もできる。一方で、経年とともに家賃は下がる、管理費や修繕積立金は上がる、新築は買って数年で価格が大きく下がるという正しい情報は口が裂けても言いません。
まともな営業では売れないから、売り方が歪む
まともに営業しても売れないため、婚活パーティーや出会い系サイトに登録し、相手と仲良くなってから投資用ワンルームを売りつける手法まで蔓延しています。
そして買ったら最後、1件では済みません。最低でも3部屋は売りつけられ、気づいた頃には5,000万円を超える借金とゴミ物件だけが残ります。
セミナーも安心材料になりません。大手新聞社や不動産ポータルサイトが主催する不動産投資セミナーにも、ワンルームマンション業者が頻繁に出入りしています。主催者が大手だからと信用せず、参加前にどの業者が登壇するのかを必ず確認してください。ワンルームマンション業者が登壇するなら、行く価値は1ミリもありません。
なぜここまでして勧めてくるのか。売る側に大きな販売利益と紹介報酬が入るからです。あなたの資産形成のためではありません。「あなただけ」「今だけ」「上司に怒られるので今日決めてほしい」こういう言葉が出たら、それは投資の提案ではなく売り抜けるための営業です。この構造は、FPが勧めてくる海外積立とまったく同じです。
買った人はどうなるか|数十人の被害者と向き合って分かったこと
私は宅建業者として、過去に数十人のワンルームマンション被害者と向き合ってきました。騙された手口は驚くほど似ています。ありもしないシミュレーションを見せられ、メリットしか提示されず、半ば強引に契約させられている。
契約した人が口を揃えて言うのは、この2つです。
- 「毎月、持ち出し(赤字)になっている」
- 「売ろうとしたら、ローン残債より安くしか売れない」
海外積立の商品も同じような売られ方をしますが、あちらは解約すれば損失が限定されます。投資用ワンルームは違います。数千万円の借金が残り、いずれ返済ができずにデフォルト(債務不履行、破産)に至る可能性が高い。債務整理の引き金になり得る点で、危険度がまったく別物です。
買ったあとに何が起きるかは、別記事で詳しく書いています。
- ワンルームマンション投資で自己破産する人が後を絶たない理由|フルローン購入の罠とブツ上げ業者の電話営業地獄:借金が回らなくなる過程を実例で追っています
- ワンルームを買うと「情弱名簿」に載る|マルチ・先物・物上げ業者の餌食にされる実態と対策:買った瞬間から、別の業者の標的になります
- ワンルームマンション投資の詐欺的手法と守るべき対策:契約前に知っておきたい手口の整理です
街を歩けば分かる、供給過剰という現実
私は散歩が好きで、自宅やオフィスの周辺をよく歩いて街を観察しています。新しい飲食店や公共性の高い施設を見つけるとテンションが上がりますが、逆に新築ワンルームマンションの建設現場に出くわすと、一気に気持ちが沈みます。
ワンルームマンションは駅前も郊外もすでに十分すぎる供給量があります。それでもデベロッパーは空いた土地に建てたがる。鉛筆みたいに細長い新築ワンルーム、ワンルームの隣にまたワンルーム、コインパーキングを取り壊してワンルーム。街を歩けばワンルームだらけです。
需要と供給のバランスが完全に崩れているので、立地が少しでも悪い物件は築10年以内でも家賃が一気に下がり、オーナーのキャッシュフローは火の車になります。私が散歩中に見つけた建設現場も駅から10分以上離れており、築10年も経てば当初のシミュレーションは大きく崩れているはずです。
欧米の不動産が価値を落としにくいのは、地方行政が新築物件や建物工事を厳しく制限・監視しているからです。聞いた話では、ドイツのある街では庭の木を1本切るのにも行政の許可が要るそうです。日本のように「建築基準法さえ守れば自分の土地に何を建てても自由」では、街全体の資産価値は上がりません。
不動産投資をやるなら、新築ワンルームではなく中古
繰り返しますが、私は不動産投資そのものを否定していません。新築ワンルームの代わりに築15〜25年の中古マンションを選べば、状況は劇的に変わります。
- 新築プレミアムが剥がれ落ちたあとの価格帯で買える
- 表面利回り8〜12%が現実的
- 実質利回りは5〜8%程度
- 個人の売主から直接購入できれば、さらに割安になる
- 家賃水準が最初から市場相場に近い
実例で比べます。新築ワンルーム1,800万円に対して、同等スペックの中古は680万円。利回りは3倍、購入価格は3分の1です。入口の価格が違えば、結果はまったく別物になります。
ただし中古なら何でもいいわけではありません。ローンを組んで中古ワンルームを買う場合の注意点は、危険なのは新築だけではない!ローンを組んで中古ワンルームマンション投資もアウトにまとめています。営業の収支表がどこで嘘をつくのかを一行ずつ検算した記事もありますので、シミュレーションを見せられている方は新築ワンルームマンション投資は本当に「やめとけ」なのか?|営業の収支表を一行ずつ検算した結果も読んでください。
勧められている今、やるべき5つのこと
1. 即決しない。必ず1週間以上かけて検討する
「今月限定」「最後の1物件」は心理戦略です。本当に良い物件なら慌てて売る必要はありません。
2. 第三者に必ず相談する
業者の話を鵜呑みにせず、利害関係のない第三者(投資家コミュニティ、税理士、FPなど)に相談してください。
3. 同じ条件の中古物件と比較する
同じエリア・同じスペックの中古価格を自分で調べ、価格差と利回り差を比べます。
4. 詳細な収支シミュレーションを要求する
20〜30年分の収支シミュレーションを出させ、空室率・家賃下落・修繕費を織り込んだ現実的な数字かを確認します。
5. 数字だけで判断する
営業マンの人柄や話の上手さではなく、実質利回り・毎月のキャッシュフロー・売却時の想定価格で判断してください。
すでに買ってしまった人へ
すでに契約してしまった方は、次の選択肢を冷静に評価してください。
1. クーリングオフ期間内なら即解約
契約書面の交付から8日以内ならクーリングオフが可能で、全額返金されます。まずは日付を確認してください。
2. 損切り売却
長期で持っても回収が難しいなら、早めに売って損失を確定させたほうが有利になる場合があります。
3. 賃貸として保有を継続
毎月の収支がプラス、あるいはマイナスが小さいなら、賃貸として持ち続ける選択もあります。
4. 専門家に相談する
個別の事情で最適解は変わります。不動産の専門家と税理士に相談してください。
まとめ|「やめとけ」と言われる理由は、価格の中身にある
投資用の新築ワンルームマンションは、開発業者の利益・販売コミッション・広告費を丸ごと内包した、構造的に契約者が損をする商品です。実質利回りはほぼゼロかマイナス、購入直後から市場価値は下がり、長期保有でも元本の回収は難しい。家賃収入でリタイアはできず、将来の値上がりも夢のまた夢です。
ここまで読んだあなたは、もう買わないと思います。だからこそ、買わされそうになっている友人や知人がいたら、正しい情報を教えてあげてください。それは社会のためになる素晴らしいことです。
※本記事は公開情報と私が現場で見てきた事実に基づく注意喚起であり、特定の個人・団体を詐欺と断定するものではありません。利回りや価格は状況によって変動します。投資判断はご自身の責任で行ってください。
副業・投資の判断に迷ったら
私は数千万円を騙された経験と、大阪府知事認可の不動産会社を20年経営してきた立場から、副業と投資の「本物と偽物」を見極める物差しをお伝えしています。
※販売・勧誘・譲渡のお取次は一切行っていません。







