
不動産ファンド「みんなで大家さん」の運営会社に対して、大阪府が事業許可を取り消す処分を出しました。
2026年9月1日の発表で、報道によれば、これで事業は事実上終了することになります。
私は大阪府知事の認可を受けた不動産会社を20年経営しています。
同じ大阪府の監督下で不動産業を営んできた人間として、「許可取り消し」という処分がどれほど重いものか、よく分かるつもりです。
行政は簡単にはこの処分を出しません。出したということは、もう続けさせるわけにはいかない段階まで来ていたということです。
この記事では、報道されている事実の整理と、不動産業を20年やってきた私の目から見た「この仕組みの何が危なかったのか」、そして出資している方・同じタイプの商品を持っている方が、いま何をすべきかを書きます。
何が起きたのか|9月1日の処分内容
まず、報道ベースの事実を整理します。
報道で伝えられている事実(2026年9月1日・MBSニュース)
・大阪府が運営会社の事業許可を取り消す処分
・年利7%の分配金をうたい、出資者3万7000人超・2000億円超を集めた
・2025年7月以降、ほとんどの商品で分配金が停止。集団返還訴訟も
・約2881億円の負債が資産を上回る債務超過
・「別の方法で資金を集めて返す」と説明しながら約束を果たさず
・処分により事業は事実上終了へ
出資者は3万7000人超、集めたお金は2000億円超。
単純に割り算をすると、1人あたり平均540万円ほどの出資になります。老後資金の一部を入れていた方が多いはずの金額感です。
そして負債は約2881億円。集めた金額を上回る借金が残っている状態です。
「年利7%の分配」は、不動産では最初から簡単な数字ではない
不動産会社を経営する立場から、はっきり書きます。
実物の不動産で、出資者に年7%を配り続けるのは、相当に難しい数字です。
不動産の収益は、賃料から管理費・修繕費・税金・借入の利息を引いた残りです。
都心の優良物件なら、表面利回りで4〜5%も珍しくありません。そこから経費を引いて、さらに運営会社の取り分を引いて、それでも出資者に7%を渡し続ける。
この計算が成り立つには、よほど条件のいい物件と運営が必要です。
もちろん、開発型の案件で一時的に高い利回りが出ることはあります。
けれど「毎年安定して7%」を長期間うたうなら、その分配がどの収益から払われているのかを、出資者がいつでも確認できる必要があります。
分配の原資が賃料や事業収益ではなく、後から入ってくる出資金に頼り始めた瞬間、その仕組みは投資ではなくなります。
一番の危険信号は「別の方法で資金を集めて返す」という説明でした
今回の報道で、私が最も注目したのはこの部分です。
大阪府が問題視した点のひとつが、出資者に対して「別の方法で資金を集めてお金を返す」と説明しながら、約束を果たさなかったことでした。
この言葉が出てきた時点で、構造は明らかです。
手元の収益では返せないから、新しくお金を集めて前の人に返す。いわゆる自転車操業です。
実は、この構造は不動産ファンドに限りません。
私は先日、iPhone買取業者の大型倒産についても記事を書きました。相場より高く買い取ると集客し、次に集めた端末の転売代金で前の人に払う。同じ形です。
「次に集めたお金で前の人に払う」仕組みは、集まる量が増え続けている間だけ回ります。
そして止まるときは、一気に止まります。今回は2025年7月に分配金が止まり、その約1年後に許可取り消しまで進みました。
行政処分は「守ってくれる仕組み」ではなく「最後に来る記録」です
ここで、多くの方が誤解しがちなことを書いておきます。
「行政の許可を受けた業者だから安心」という考え方は、順番が逆です。
行政が調査し、処分を出すのは、問題が起きて、被害が具体化した後です。
今回も、分配金が止まってから許可取り消しまでに1年以上かかっています。その間、出資者にできることはほとんどありませんでした。
私自身、認可を受けて営業している側だから断言しますが、認可や許可は「この業者に出資すれば安全」という保証ではありません。
行政は最後に記録を残してくれますが、あなたのお金を先回りして守ってはくれません。
守れるのは、出す前のご自身の確認だけです。
出資している方が、いまやるべきこと
すでに出資している方に向けて、現実的な話を書きます。
1. 書類と記録をすべて保全する
契約書、出資額の分かる振込記録、分配金の入金履歴、運営会社からの案内やメールを、日付が分かる形で全部残してください。
今後の手続きがどう進むにせよ、これが出発点になります。
2. 「すぐに全額戻る」前提で動かない
厳しい話ですが、債務超過の会社からお金が戻る場合、時間がかかり、金額も限られるのが現実です。
返還を待つ間の生活設計は、戻らない前提で組み直すほうが安全です。集団訴訟や相談窓口の現実については別の記事に詳しく書いています。
3. 「回収します」と近づいてくる話を疑う
これが一番伝えたいことです。
大型の投資被害が報道されると、必ず「出資金を取り戻せます」「被害者救済の特別ファンドがあります」と名乗る二次勧誘が現れます。
被害者の焦りにつけ込む、二次被害の典型です。着手金を要求されたり、別の投資に誘導されたりしたら、その場で断ってください。
相談は、弁護士会・消費生活センター・金融庁の窓口など、身元の確かな場所だけにしてください。
同じタイプの商品を持っている方へ|確認してほしい5項目
「高利回りの分配型商品」は、みんなで大家さんだけではありません。
いま似た商品に出資している方は、次の5つを確認してみてください。
- 分配の原資|賃料や事業収益から払われているか、説明資料で確認できるか
- 利回りの根拠|その物件・事業で本当に年7%を生めるのか、数字の裏付けがあるか
- 解約・償還の条件|途中でやめられるか。満期延長の条項が入っていないか
- 新規募集の状況|分配や返還が滞っているのに、新しい出資を募り続けていないか
- 監督官庁の処分歴|行政処分や指導の記録を、業者名で検索したか
ひとつでも説明が曖昧なもの、確認できないものがあれば、追加の出資は止めて、償還の条件を確かめるべき段階です。
まとめ|「毎年7%」の心地よさが、確認を止めさせる
年利7%という数字は、絶妙です。
「億万長者になれる」ほど派手ではなく、「銀行預金よりずっといい」と感じさせる。だからこそ、慎重な方でも手を出してしまいます。
けれど、投資の判断で大切なのは利回りの高さではありません。
その利回りが、何の収益から、いつまで払われるのかを説明できるかどうかです。
説明できない商品にお金を預けないこと。
そして「行政の許可があるから大丈夫」ではなく、出す前に自分で確認すること。
3万7000人の出資者が残してくれた教訓を、次の被害を防ぐために活かしてほしいと思います。
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