「一度、FPに相談してみようと思うんです」
家計や保険、老後のお金が気になり始めたとき、多くの人が最初に思い浮かべる選択肢です。
先に結論をお伝えします。
FPに相談する前に、自分の数字を持ってください。それがないと、相談は「販売」に変わります。
FP(ファイナンシャルプランナー)に相談すること自体は、悪いことではありません。
ただ、何も持たずに行くと、相談の主導権は最初から相手にあります。
この記事では、FPに相談する前に知っておくべきことと、行く前に自分でやっておくべき準備を、順番にお話しします。
私はFPではありません。
お金と情報の世界で12年間、「誰が誰からお金をもらっているか」を見続けてきた立場からの話です。
FPという職業を否定する記事ではありません。
相談を「あなたのため」に使うために、知っておくべき順番の話です。
長くなりますが、相談に行く前に、一度だけ目を通してください。
まず知っておくこと:無料相談には、理由がある
FP相談には、大きく分けて2種類あります。
ひとつは、相談料を払う相談。
もうひとつは、無料の相談。
無料相談は、なぜ無料で成り立つのか。
答えは単純です。
相談した人が保険や金融商品を契約すると、その会社からFPに手数料が入るからです。
これは隠された話ではなく、業界の仕組みとして公開されています。
つまり、無料相談のFPは、あなたの相談料ではなく、あなたが契約する商品の手数料で生活しています。
悪いことだとは言いません。
ただ、言葉の向きが決まる、ということです。
無料相談で「保険は入らなくていい」と言われることは、構造上、起きにくい。
これを知らずに行くと、「親身に相談に乗ってくれた」と感じたまま、必要以上の保険に入って帰ってくることになります。
相談料を払う相談なら、この構造はいくらか弱まります。
ただし、相談料を受け取りつつ、商品の手数料も受け取るFPもいます。
行く前に、「あなたの収入は、相談料ですか、それとも商品の手数料ですか」と聞いてください。
この質問を嫌がる相手なら、行く必要はありません。
資格は「中立」を意味しない
FPには資格があります。
国家資格のFP技能士、民間資格のAFPやCFP。
資格があると、なんとなく信頼できる気がします。
しかし、資格は知識の証明であって、立場の証明ではありません。
保険会社の営業担当者の多くも、FP資格を持っています。
銀行の窓口担当者も、証券会社の営業も同じです。
資格を持っている人が、自社の商品を売る。
それは資格とは別の話です。
「FP資格あり」は、「あなたの味方」の意味ではありません。
見るべきは、資格ではなく、その人が所属している会社と、収入の出どころです。
名刺の裏側、と言ってもいいでしょう。
相談で起きやすい3つのこと
無料相談に何も持たずに行くと、起きやすいことが3つあります。
ひとつ目。
不安を大きくされる。
「老後に2,000万円必要」「教育費は一人あたり1,000万円」といった大きな数字が出てきます。
数字自体は嘘ではありませんが、あなたの場合の数字ではありません。
平均の数字で不安になり、平均の対策を買う。
これがいちばん多い流れです。
ふたつ目。
保険で解決しようとされる。
貯蓄の相談をしたのに、貯蓄型の保険を勧められる。
投資の相談をしたのに、変額保険を勧められる。
これは、FPが保険を売ると手数料が入るからであり、それがあなたに最適だからではありません。
貯蓄型の保険は、途中でやめると元本を下回ることが多く、しかも手数料が見えにくい商品です。
みっつ目。
その場で決めさせられる。
「今日申し込めば今月分から」「年齢が上がる前に」といった言葉で、持ち帰る時間を短くされます。
保険は、来月入っても間に合います。
年齢が上がって保険料が上がるとしても、それは「一晩考える価値」を超える金額ではありません。

行く前に、自分で作っておく「一枚の紙」
ここからが、この記事でいちばん伝えたい部分です。
FPに相談する前に、一枚の紙を作ってください。
書くのは、次の5つです。
・毎月の手取り収入
・毎月の固定支出(家賃、ローン、光熱費、通信費、保険料、サブスク)
・今ある貯金と、あれば投資の残高
・これから確実に必要な大きな出費(教育費、住宅、車、親の介護など)と、その時期
・いま入っている保険の種類と、月々の保険料と、いざというとき受け取れる金額
これを埋めるだけで、多くの人が気づきます。
「保険料、こんなに払っていたのか」
「固定費を減らすほうが、投資より早いのでは」
そして、この紙を持って相談に行くと、相手の対応が変わります。
数字を持っている人に、平均の数字で不安を煽ることはできません。
「老後に2,000万円」と言われても、「私の場合はこの紙の数字だと、いくら足りませんか」と返せる。
それだけで、相談は「販売」から「相談」に戻ります。
自分の数字を持つと、質問が変わる
数字を持つと、FPへの質問も変わります。
何も持たないときの質問は、こうなります。
「私、何をすればいいですか」
これは、相手に主導権を渡す質問です。
数字を持っているときの質問は、こうなります。
「この固定費の中で、まず減らせるのはどこですか」
「今の保険で、実は重なっている保障はありますか」
「この貯金のうち、動かしてはいけない金額はいくらですか」
答えが商品名でなく、あなたの数字で返ってくる質問です。
商品名で返ってきたら、その相談は販売です。
その場で決めず、持ち帰ってください。
相談の後に、確認すること
相談が終わったら、帰ってから3つを確認してください。
ひとつ目。
提案された商品の手数料はいくらか。
保険なら、保険料のうち保障に使われる部分と、会社や販売者に入る部分。
投資信託なら、購入時と保有中の手数料。
説明を受けていないなら、聞き直す価値があります。
ふたつ目。
途中でやめたら、いくら戻るか。
貯蓄型の保険は、この数字で商品の本質がわかります。
10年でやめて元本を大きく下回る商品なら、それは「貯蓄」ではありません。
みっつ目。
同じ目的を、もっと安く達成できないか。
たとえば、死亡保障だけなら掛け捨ての保険のほうが圧倒的に安い。
貯蓄なら、保険を通さず貯金と積立投資に分けたほうが、手数料は少ない。
提案された商品を、分解してみる。
これだけで、多くの提案は「便利だが高い」ことが見えてきます。
よくある勘違い:「相談=契約しなければ失礼」
無料相談を受けた後、多くの人が感じることがあります。
「時間を使ってもらったのに、何も契約しないのは申し訳ない」
この気持ちが、本来なら入らない保険に入る最後の一押しになります。
はっきり書きます。
無料相談は、相手の営業活動です。
あなたが時間を使ってもらったのではなく、相手が営業の時間を使ったのです。
契約しないことは、失礼ではありません。
営業を受けて断ることは、日常のことです。
「申し訳ない」と感じたら、それは相談ではなく営業を受けた証拠です。
その感情ごと、持ち帰ってください。
一晩たてば、たいてい消えます。
消えない提案だけが、本当に必要な提案です。
「相談する相手」を選ぶ基準
では、どんな相手なら相談する価値があるのか。
私が考える基準は3つです。
ひとつ目。
収入の出どころを、聞かれる前に説明する人。
「私は相談料で仕事をしています」「商品を契約されると手数料が入ります」
どちらでも構いません。
先に言える人は、隠すものがない人です。
ふたつ目。
「入らなくていい」と言える人。
保険の相談で「今の保険で足りています」と言える人は、商品の手数料に依存していない人です。
一度でもこの言葉を聞けたら、その相手は信頼していい。
みっつ目。
数字で答える人。
平均ではなく、あなたの数字で答える。
不安を言葉で大きくせず、紙の上で小さくしてくれる。
この3つを満たす相手は、多くありません。
だからこそ、相手に頼る前に、自分の数字を持つ必要があるのです。
私が「自分の数字を持つ」ことにこだわる理由
私はこのブログで、12年間、お金の相談を受けてきました。
その中で、いちばん多かったのが「何から始めればいいかわからない」という相談です。
そして、その相談に答える最初の一歩は、いつも同じでした。
商品の話ではなく、その人の数字を出すこと。
数字を出すと、半分以上の人が、投資や保険の前にやるべきことに気づきます。
FPに相談することは、その「気づき」を他人に任せることです。
任せる相手が中立なら、いい。
任せる相手が販売者なら、気づきの代わりに商品が届きます。
誰に相談するかより先に、自分の数字を持つ。それが、いちばん安い保険です。
「一枚の紙」の書き方の例
具体的な形がわからない、という方のために、書き方の例を置いておきます。
紙の上半分に、毎月の話を書きます。
手取り収入、いくら。
固定支出、いくら。その内訳として、住まい、通信、保険、サブスク、ローン。
差し引きで、毎月残る金額。
紙の下半分に、これからの話を書きます。
今の貯金と投資の残高。
3年以内に確実に必要な大きな出費と、その金額。
10年以内に必要になりそうな出費と、その金額。
最後に、右下に一行。
「毎月残る金額のうち、動かしていい金額」
これは、毎月残る金額から、これからの出費に備えて貯めておく分を引いた数字です。
この一行が、あなたが投資や保険に使っていい上限です。
FPに見せるのは、この一行で十分です。
「この金額の範囲で、私に必要なものは何ですか」
この聞き方をされた相談相手は、平均の数字で不安を煽ることができません。
あなたの上限が、すでに紙に書いてあるからです。
書き方に正解はありません。
大事なのは、自分の手で一度書くこと。
書いた人と書いていない人では、同じ相談を受けても、帰ってくる結果が違います。
よくある質問
Q. 有料のFP相談なら、安心ですか。
無料よりは、構造上ましです。
ただ、相談料と商品の手数料を両方受け取るFPもいます。
「相談料だけで仕事をしていますか」と聞いて、はっきり答えてもらってください。
答え方で、だいたいわかります。
Q. 保険の見直しだけ頼みたいのですが。
いちばん営業を受けやすい相談です。
見直しの結果が「別の保険への乗り換え」だったら、それは見直しではなく販売です。
見直しは「減らす」か「やめる」で終わることが多い。
減らす提案が一度も出てこない相談は、疑ってください。
Q. 数字を書こうとしたけれど、保険の内容がわかりません。
それ自体が、大きな発見です。
内容がわからない保険に、毎月お金を払っている。
保険証券を出して、「保障の種類」「月々の保険料」「解約したら戻る金額」の3つだけ探してください。
それだけで、相談に持っていける紙になります。
Q. FPの相談を受けずに、自分で全部判断できますか。
数字を持てば、かなりの部分はできます。
それでも判断に迷う部分が残ったら、そのときにFPを使えばいい。
「何を聞きたいか」がはっきりしてからの相談は、短く、安く、役に立ちます。
順番が逆にならないように、それだけ気をつけてください。
相談に行くなら、この順番で
最後に、整理します。
まず、一枚の紙に5つの数字を書く。
次に、相談相手の収入の出どころを確認する。相談料か、商品の手数料か。
相談では、商品名ではなく、自分の数字で答えが返ってくる質問をする。
その場で決めず、持ち帰る。
帰ってから、手数料と、途中でやめたときの戻り額と、もっと安い代替策を確認する。
この順番を守れば、FP相談は役に立ちます。
守らなければ、FP相談は販売の入口になります。
違いは、FPの良し悪しではありません。
同じFPに、同じ日に相談しても、紙を持っている人と持っていない人では、提案される商品が変わります。
これは、相手が悪いのではなく、構造がそうなっているだけです。
あなたが数字を持っているかどうか、それだけです。
保険の相談に行く前に、自分の数字を持つ。
この記事が、その最初の一歩になれば幸いです。
関連記事
「一枚の紙」を、スマホの中で作る方法もあります。
保険を売らない立場で、自分の数字を出すためだけに作ったアプリの話は、次の記事で書きます。
自分の数字を持ったうえで、それでも判断に迷うことがあれば、コアメンバーの相談の場も使ってください。
相談は、数字を持ってから。それだけで、結果が変わります。







