「変動金利が上がったら、うちの住宅ローンは毎月いくら増えるのか」
気になってはいるけれど、具体的な金額まで計算したことはない。そういう方がほとんどだと思います。
私は大阪府知事認可の不動産会社を20年経営し、お客様が住宅ローンを組む場面に何度も立ち会ってきました。この20年、変動金利は「上がらないもの」として扱われ、だから誰も計算しなかった。前提が変わったいま、やるべきは悩むことではなく計算です。
この記事では、借入3,500万円・返済期間35年・元利均等・ボーナス払いなしという首都圏の平均的な住宅ローンを例に、金利ごとの実額をそのままお見せします。借入額が2,500万円なら約7掛け、5,000万円なら約1.4倍で読み替えてください。比率は同じです。
これから借りる人|金利1%の差は35年で685万円
まず、新規で借りる人の比較表です。
| 金利 | 毎月返済 | 総返済額 | 利息の総額 |
|---|---|---|---|
| 0.5% | 90,855円 | 3,816万円 | 316万円 |
| 1.0% | 98,800円 | 4,150万円 | 650万円 |
| 1.5% | 107,165円 | 4,501万円 | 1,001万円 |
| 2.0% | 115,942円 | 4,870万円 | 1,370万円 |
| 2.5% | 125,123円 | 5,255万円 | 1,755万円 |

見てほしいのは0.5%と1.5%の行です。つい最近までの変動金利の水準と、市場が織り込む2027年の政策金利水準。毎月の差は16,310円、年間で約20万円、35年間では約685万円の差になります。
同じ家、同じ間取りです。利息の総額は316万円から1,001万円へ。2.5%まで行けば1,755万円。3,500万円の家を買ったつもりが、5,255万円払っている。金利とは、そういう力です。
すでに借りている人|+1%で月14,000円、残り30年で約502万円
次に、すでに変動0.5%で借りて5年たった人の目線です。残高は約3,037万円になっています。ここで金利が上がると、こうなります。
| 上昇後の金利 | 増加額(毎月) | 年間 | 残り30年 |
|---|---|---|---|
| 1.5%(+1%) | +13,948円 | 約17万円 | 約502万円 |
| 2.0%(+1.5%) | +21,387円 | 約26万円 | 約770万円 |
| 2.5%(+2%) | +29,131円 | 約35万円 | 約1,049万円 |

標準シナリオの「+1%」で、月14,000円。
「まあ、払えなくはないか」と思ったかもしれません。その感覚こそ、立ち止まって見てほしいのです。これは残り30年間、毎月、確実に出ていく14,000円です。携帯料金の見直しやサブスクの解約で浮かせられる額を、はるかに超えています。
5年ルール・125%ルールは「免除」ではない
「変動でも5年間は返済額が変わらないから大丈夫」と言われた方も多いはずです。
正確には、5年ルールは返済額を守るかわりに元本の減りを遅らせる仕組みで、125%ルールは超過分を先送りするだけで、免除ではありません。金利が大きく上がると、返済額よりも利息のほうが大きくなり、払っても借金が減らない「未払い利息」まで起こり得ます。
さらに、一部のネット銀行の変動金利ローンには、この2つのルール自体がありません。金利が見直されれば、返済額が半年ごとにそのまま変わります。
自分のローンにどのルールがあるのか、契約書で確認したことがありますか。
金利が動かない時代には、確認する必要がなかったことです。時代が変わったいま、最初にやるべき点検です。
年収で見ると危険水域が分かる
住宅ローンの安全度は、手取り年収に対する年間返済額の割合(返済負担率)で測れます。一般に25%以内が安全圏、30%超は黄信号です。
手取り年収500万円の家庭なら、金利0.5%で負担率21.8%(安全圏)、1.5%で25.7%(安全圏の上限超え)、2.5%で30.0%(黄信号)
同じ家、同じ年収なのに、金利だけで安全圏から黄信号まで移動します。銀行の審査に通った金額は「金利が上がらない前提」での上限だからです。ペアローンやボーナス払いを併用している家庭は、前提が崩れる入口がさらに増えます。
ペアローン世帯の危険水域|怖いのは金利ではなく「収入が半分になる日」
ペアローンは夫婦それぞれが自分名義でローンを組む形です。世帯の総額が同じでも、金利が上がるときは2本とも同時に上がります。
ここで多くの方が安心します。同じ3,500万円・35年でも、世帯の手取りが800万円あるなら、上の表で計算した負担率は0.5%で13.6%、2.5%でも18.8%。数字上は余裕に見えます。
問題は、その800万円が前提として固定されていることです。育休、時短勤務、転職、体調不良、介護。どれか一つで片方の収入が止まり、手取りが400万円になっても、返済額は1円も減りません。同じ計算をすると、負担率は0.5%でも27.3%、2.5%なら37.5%になります。
ペアローンで本当に危険なのは、金利上昇と収入減が同時に来る局面です。
金利は数年かけてじわじわ上がりますが、収入は月単位で消えます。重なった瞬間に、安全圏だった家計が黄信号を飛び越えます。
売る側は「お2人なら借りられます」とは言いますが、「お2人とも働き続けられますか」とは聞きません。借りられる金額と、返し続けられる金額は別物です。
ペアローンの方は、片方の収入がゼロになった前提で負担率を一度計算してください。そこで30%を大きく超えるなら、金利の話の前に立て直しを考える段階です。
固定に借り換えるべきか|判断の軸は「金利差」と「残年数」
実額を見たあと必ず出てくる質問です。私の答えは、損得では決めない、です。理由を順に説明します。
残年数が短いほど、同じ1%が効かなくなる
この記事の2つの表が、そのまま判断材料になります。
- 3,500万円・残り35年で、金利1%の差は約685万円
- 3,037万円・残り30年で、金利1%の差は約502万円
残高が減り残年数が短くなるほど、同じ1%が生む金額は小さくなります。残高が大きく残年数が長い人ほど固定に移る価値が大きく、残りが10年台の人は同じ1%でも家計を壊すほどの金額になりにくい。まず自分がどちら側かを確認してください。
損益分岐は「上乗せ分×残年数+諸費用」と「上がったときの増加額」の比較
固定に借り換えると、通常は当面の返済額が上がります。いまの変動金利より固定金利のほうが高いのが普通だからです。比べるものは2つです。
- 固定に移ることで確実に増える金額(毎月の上乗せ分×残年数+借り換えの諸費用)
- 変動のまま金利が上がった場合に増える金額(この記事の表なら、+1%で約502万円)
借り換えには一般的に事務手数料や保証料、登記費用などがかかります。金額は金融機関で違うので、見積もりを取って自分の数字で計算してください。
それでも「損得」では決められない
ただし、上の2つを比べても、どちらが得かは将来の金利次第で誰にも分かりません。上がらなければ固定は損、大きく上がれば安い保険料だった、というだけです。ですから私は、判断の基準をこう置いています。
金利が+1%上がったとき、家計が壊れるなら固定。耐えられるなら変動のまま。
得か損かではなく、耐えられるかどうかで決める。固定金利は投資ではなく、保険の買い物です。
+1%の14,000円を固定費の見直しで吸収でき、貯蓄も続くなら変動のままで構いません。逆にその14,000円で収支が赤字になるなら、金利ではなく借入額の問題です。
繰上げ返済と外貨資産形成、どちらを先にやるか
これもよく聞かれます。私の順序は決まっています。
- 第1に、生活防衛資金。生活費の半年分を円の現金で手元に置く。ここが埋まらないうちは繰上げ返済も投資もしません。繰上げ返済に回したお金は戻ってきません。
- 第2に、金利上昇分を吸収する余力づくり。通信費、保険料、サブスクリプション。なんとなく払っているものを見直すだけで、月1万円から2万円の削減は十分可能です。+1%の14,000円は、ここでほぼ吸収できます。
- 第3に、繰上げ返済と外貨資産形成を並行させる。割合は家計の耐性で決める。
なぜ並行なのか。性質が違うからです。繰上げ返済は確実に効きます。金利が上がるほど利息は増えるので、元本を減らすことが最も確実な防御になります。
一方で、円だけを持っていることのリスクは住宅ローンの外側にあります。私は以前から、円だけに資産を置かないほうがいいと書いてきました。円安ドル高が続く構造的な理由も解説してきました。ローンの元本を減らしても、円そのものの目減りは止められません。
やってはいけない順序が2つあります。
1つは、住宅ローンを放置したまま、うまい話の積立てに飛びつくこと。毎月5万円を30年積み立てて資産1億円になりますという話には気をつけてください。私は数千万円を騙された側の人間です。確実に増える利息を放置して不確実な数字に賭けるのは、順序が逆です。
2つめは、金利上昇分を投資用不動産で埋めようとすること。ワンルームマンション投資で自己破産する人が後を絶たない理由のとおり、住宅ローンが重い状態でフルローンを重ねるのは最悪の一手です。
今日やること|30分で終わる4つの点検
ここまでを今日の行動に落とします。すべて自宅でできます。
- 返済予定表を出す。いまの適用金利、残高、残年数、次の金利見直し日。この4つを紙かメモに書き出します。
- 契約書で5年ルールと125%ルールの有無を確認する。無いタイプなら、金利が動いた半年後には返済額がそのまま変わります。
- 返済負担率を計算する。年間返済額を手取り年収で割るだけ。25%以内なら安全圏、30%超なら黄信号。ペアローンなら、片方の収入がゼロの前提でもう一度計算します。
- 固定に借り換えた場合の見積もりを1件だけ取る。数字が手元にあれば、判断は驚くほど簡単になります。
増えた分をどこから出すかも先に決めてください。値上げが続く環境での家計の守り方は2026年の値上げラッシュと個人投資家の生活防衛術にまとめています。
注意点|この記事で「書かないこと」
この記事に各銀行の変動金利の一覧は載せていません。適用金利は人によって違うからです。同じ銀行の同じ商品でも、審査結果の優遇幅で数字は変わります。あなたの返済予定表だけが、唯一正確な資料です。
金利が今後いくらまで上がるかも断定しません。市場が2027年に向けた政策金利の上昇を織り込んでいるのは事実ですが、保証は誰にもありません。私が言えるのは1つ。上がったとき毎月いくら増えるかは、今日この場で計算できます。
なお本記事の返済額は借入3,500万円・35年・元利均等・ボーナス払いなしの試算値で、実際の適用金利や返済額は金融機関や優遇条件により異なります。投資助言ではありません。税金が関わる場面は税理士か税務署に確認してください。
金利と円安の全体像を1冊にまとめました
この記事の数字は、書籍『金利は上がる。円は戻らない。』の住宅ローン章から抜粋しました。
本では、なぜ金利が上がるのか、円預金だけの家計に何が起きるのか、固定への借り換え判断、繰上げ返済の優先順位、家計の組み替え方をグラフ8点とともに解説しています。
まとめ|変動金利が上がったら、いくら増えるのか
- これから借りる人は、3,500万円・35年で金利1%の差が約685万円、毎月16,310円。
- すでに借りている人は、残高3,037万円・残り30年で+1%なら毎月約14,000円、約502万円。
- 5年ルールと125%ルールは免除ではなく先送り。ルール自体が無い商品もある。
- 手取り年収に対する負担率は25%以内が安全圏、30%超は黄信号。
- ペアローンの危険水域は、金利上昇と収入減が重なったとき。
- 固定への借り換えは損得ではなく、+1%で家計が壊れるかで決める。
- 順序は、生活防衛資金、吸収余力づくり、そのうえで繰上げ返済と外貨資産形成を並行。
怖いのは金利が上がることではなく、いくら増えるかを知らないまま30年を過ごすことです。今日、返済予定表を1枚出すところから始めてください。
副業・投資の判断に迷ったら
私は数千万円を騙された経験と、大阪府知事認可の不動産会社を20年経営してきた立場から、副業と投資の「本物と偽物」を見極める物差しをお伝えしています。
※販売・勧誘・譲渡のお取次は一切行っていません。







