「業者からもらった売電シミュレーションの通りに、収入が入ってきません」
太陽光発電の投資について私に届く相談は、ほとんどがこれです。買う前ではなく、買ったあとの相談です。
私は大阪府知事認可の不動産会社を20年経営し、投資副業のコミュニティ(コアメンバー)を12年続けてきました。私自身、数千万円を騙された当事者でもあります。
太陽光については、ブーム当時にセミナーへ足を運び、実際に投資した人からも話を聞いた上で、自分では手を出しませんでした。この記事はその判断の記録と、いま出口を探している方への確認手順です。
結論|太陽光発電の投資で失敗する人は、同じ3か所でつまずいている
失敗した方の相談を聞いていくと、つまずいた場所はほぼ同じ3か所です。
- 発電量を業者の数字のまま信じた。自分で稼働率(設備利用率)の意味を確認しなかった。
- 融資を使った。収入が想定を下回った瞬間に、返済額との差がそのまま毎月の赤字になる。
- 出口を決めずに買った。売るときにいくらになるのか、20年後の撤去や処分に誰がいくら払うのかを、契約前に確認していない。
私がブーム当時に太陽光発電の投資を見送った理由
ここからは、私が2016年に書いた内容をそのまま残します。当時の判断の記録です。
東日本大震災以降、再生可能エネルギーに注目が集まったことで、太陽光パネル投資という案件がそこら中で出回りました。適当な場所に区画を買って太陽光パネルを設置し、売電して安定収入を得るという投資モデルが広まったのです。
不動産の賃料収入よりも堅実で収益性も高い、初期投資額もそれほど高くない、場合によっては銀行融資も受けられる。そう説明されて、本当に多くの方が投資をされたかと思います。ですが現実はそう甘くありませんでした。当初業者から聞かされていた売電収入のシミュレーションと、現状の収入が大きくかけ離れていると、ひどく困っておられるのです。
太陽光パネル投資案件は、ブーム当時、詐欺まがいのものもたくさんありました。私も興味があってセミナーを聞いたり、実際に投資した人から話を聞いたりと自分なりに調査しましたが、四季があって日照時間の短い日本では収入にバラツキがあるので、業者の収益シミュレーション通りにはいかないだろうと判断してやめました。当時の判断は間違いではなかったと、今になって確信しています。
当時調べたところ、日本で最も日照時間の長い地域でも、太陽光の稼働率は15%もないようでした。この15%というのは利回りではありません。太陽光パネルがフル稼働した状態を100%として、そのうち15%しか稼働しないという意味です。こんな状況で儲けろという方が無理ですよ。
収入はあれど微々たるもので、銀行融資を使って投資している人は返済額の方が大きく、大赤字ではないでしょうか。何か新築投資ワンルームマンションの状況とよく似ています。
稼働率(設備利用率)とは何か。利回りと混同すると必ず失敗する
相談を受けていて、いちばん多い勘違いがここです。稼働率(設備利用率)は、設備が一年中フル出力で回り続けた場合に得られるはずの発電量を100とおいて、実際にどれだけ発電できたかを示す割合です。お金の話ではなく、あくまで発電量の話です。
なぜ100にならないのか。理由は当たり前のことばかりです。
- 夜は発電しない。日の出から日没までしか動かない。
- 曇りと雨の日は大きく落ちる。梅雨や冬の日照時間が短い時期は特に落ちる。
- パネルは表面が高温になると効率が落ちる。真夏がいちばん発電するとは限らない。
- 建物や樹木の影、パネルの汚れ、経年劣化、変換機器を通すときの損失もある。
これらが積み重なった結果が、私が当時調べた「日照条件の良い地域でも15%に届かない」という数字です。ここを利回り15%と読み違えたまま契約書に判を押してしまうと、初年度の売電明細を見た瞬間に青ざめることになります。
営業に必ず聞いてほしい一言
「この発電量の予測は、どこの地点の、何年分の日射データを使って計算したものですか」
この一言に、資料の出典と地点名で即答できない相手からは買わないでください。答えられないということは、その数字を自分で検証していないということです。
「20年40円保証」を材料にした販売トークの見分け方
太陽光の買取価格は40円からスタートして徐々に下がり、私がこの記事を最初に書いた2016年の時点で24円と、当時の約半分になっていました。その後も価格は下がり続けています。最新の制度と単価は、必ず資源エネルギー庁など一次情報の公表資料でご自身で確認してください。
ここで出てくるのが、40円の時期に認可を受けていた事業者の設備は20年間40円で買い取ってもらえるお墨付きがある、という話です。これを材料に太陽光パネルを販売している業者が今でもあります。
ですが、稼働率が15%に満たないようでは40円で買い取ってもらっても採算が合いません。よって私の中では、太陽光パネル案件は投資に値しないという判断です。
販売トークを見分ける観点は多くありません。
- 単価の保証と、収入の保証は別物。40円という数字が保証しているのは1キロワットアワーあたりの値段だけで、何キロワットアワー発電できるかは何も保証していない。
- 強調される数字が単価だけ。発電量の根拠、実績データ、ランニングコストの説明が資料に無い、または一行でまとめられている。
- 権利そのものを売っている。まだ発電していない、あるいは実績のない設備を、単価の有利さだけを理由に転売している。
- 判断を急がせる。落ち着いて計算されると困る案件ほど締め切りを作ります。
もう一つ、買取期間には終わりがあります。期間が終わったあとの売電単価は期間中と同じではなく、一般的には大きく下がります。20年目までの数字で組まれたシミュレーションは、21年目以降が白紙だと考えてください。
中古の太陽光と出口|売るときに値段を決めるのは何か
いま私に届く相談の多くは、買う前ではなく、持っている設備をどうするかという話です。中古の太陽光設備を買う側が見るのは、だいたい次の点です。売る側は、この材料を揃えられるかどうかで金額が変わります。
- 買取期間があと何年残っているか。残りが短くなるほど、買い手にとっての価値は下がる。
- 実績の発電量データがあるか。予測ではなく、月ごとの実績です。ここが出せない設備は買い叩かれます。
- 土地の権利がどうなっているか。所有なのか、借りているのか。借りている場合は残りの契約期間と地代。
- 設備の状態と保守の履歴。変換機器の交換時期、パネルの洗浄や除草をどうしてきたか。
- 撤去と処分の費用を誰が負担するのか。契約書のどこにどう書いてあるかを、必ず自分の目で確かめてください。
ここで多くの方が詰まります。売却で入ってくる金額より、融資の残高の方が大きいという状態です。この差額を現金で埋められなければ、売りたくても売れません。これは新築ワンルームマンションを高値で買わされた方が直面する状況とまったく同じです。私は以前から、資産を分散させすぎるより一定の現金を手元に置いておくべきだと書いてきましたが、その理由がここにあります。損切りには現金が要るのです。
新築ワンルームマンション投資と構造がそっくりな理由
私が太陽光を見送ったとき、これは新築投資ワンルームマンションとよく似ていると感じました。10年経って、その印象は確信に変わっています。共通しているのは次の3つです。
- 融資が使える。手元にお金が無くても始められるので、判断の入口が広い。
- 他人が作ったシミュレーションで売る。買う側が検算できない前提が、都合よく置かれている。
- 出口が用意されていない。売るときの値段も、終わったあとの費用も、売る側の資料には書かれていない。
不動産会社を20年やってきた立場から言えば、業者のシミュレーションは一行ずつ検算するものです。新築ワンルームの収支表を一行ずつ検算した記事と、シミュレーションのどこに嘘が仕込まれるかを分解した記事があります。太陽光の資料でも、見る場所は同じです。
含み損を抱えた資産を持ち続けるか損切りするかという判断についても、私は早めに損を確定させるべきだという立場です。傷が浅いうちに動いた方が、選べる道が多いからです。
今日やること|立場別のチェックリスト
まだ契約していない方
- 営業に、発電量予測の根拠となる地点名とデータの年数を聞く。即答できなければそこで終了。
- 資料の売電単価が、20年間ずっと同じ数字で置かれていないか確認する。
- ランニングコストの行を数える。保険、点検、変換機器の交換、洗浄、除草、土地の費用、税金。抜けていれば自分で足す。
- 融資を使う場合、収入が予測の7割になった月の返済との差を、自分で計算する。
- 撤去と処分の費用が誰の負担かを、契約書の条文で確認する。
すでに保有していて、収入が想定と違う方
- 過去の売電明細を月ごとに並べ、実績の発電量を年単位で集計する。
- その実績を、契約時にもらったシミュレーションと同じ表に並べて差を出す。
- 融資の残高と、毎月の返済額を書き出す。売却額が残高を下回る場合、いくら足りないのかを把握する。
- 売却の査定は必ず複数から取る。1社の提示額を相場だと思わない。
- 撤去や処分を選ぶ場合の見積もりも取っておく。持ち続ける費用と、やめる費用を並べて比べる。
- 税金の扱いは必ず税理士か税務署に確認する。ネットの情報で自己判断しない。
すでに騙された、あるいは高値で買わされたと感じている方は、誰にも相談できないまま時間が過ぎるのがいちばん危険です。相談先が見つからないときにやるべきことを別記事にまとめてあります。
注意点|数字は必ず一次情報で確認してください
この記事に出てくる稼働率や買取価格は、私が当時調べて記録した数字です。制度も価格も年ごとに変わりますので、判断の前に必ず最新の公表資料でご自身で確認してください。
また、ここに書いたのは特定の企業や商品の評価ではなく、仕組みと売り方の一般論です。最終的な判断はご自身の責任でお願いします。
まとめ
私が最初にこの記事を書いた年は特に天気が悪く、夏場も曇りや雨が多かったので、前の年より売電収入が下がったという声を多く聞きました。天気は選べません。選べるのは、他人の作った数字を信じるかどうかだけです。
買取価格につられて太陽光パネル投資を始めるようなことがないよう、くれぐれもお気をつけください。すでに持っておられる方は、まず実績の発電量を自分の手で集計してください。数字が出れば、持ち続けるか手放すかの判断は必ずできます。
副業・投資の判断に迷ったら
私は数千万円を騙された経験と、大阪府知事認可の不動産会社を20年経営してきた立場から、副業と投資の「本物と偽物」を見極める物差しをお伝えしています。
※販売・勧誘・譲渡のお取次は一切行っていません。







