海外不動産投資についてよくお問い合わせを頂きます。経済成長著しい東南アジアの国を中心に、カナダやアメリカなどの先進国の不動産についても、積極的な投資案内や勧誘がそこら中で行われているようです。
そして最近多いのは「買う前の相談」ではなく「買ってしまった後の相談」です。物件が完成しない、家賃が入らない、売れない、業者と連絡が取れない。最後に必ずこう聞かれます。「どこに相談すればいいですか」と。
先に結論を書きます。日本国外の不動産や投資商品を購入して結果として騙されてしまった場合、日本の法律は適用されず、相談できる機関もありません。裁判を起こしても基本勝てませんし、完全な自己責任として片付けられてしまいます。厳しい話ですが、ここを直視しないと次の一手を間違えます。
私は数千万円を騙された経験があり、大阪府知事認可の不動産会社を20年経営してきました。そして私自身、2013年ごろまでフィリピン、タイ、インドネシアにコンドミニアムを保有していた当事者です。
結論:日本の窓口では解決できない前提で動く
「相談できない」のは、あなたの探し方が悪いからではありません。舞台が海外にあるという一点で、日本国内の窓口が使える範囲が無くなるからです。私が見てきた範囲では、日本の警察や消費者庁、弁護士に相談して海外不動産のトラブルが解決した例はありません。
だから順番が変わります。助けてくれる先を探し続けて時間とお金を溶かすより、これ以上お金を出さない、証拠を固める、損切りの線を決める。この三つに絞ったほうが手元に残るお金は多くなります。
なぜ相談できないのか。三つの壁
壁1 契約の土俵が日本にない
海外の物件の契約書は、一般的にはその国の法律を前提に作られ、もめたときにどこの裁判所で争うかも現地側で決められています。最初から、日本の裁判所であなたを守る建て付けにはなっていません。
壁2 警察と行政は民事として扱いやすい
契約書があり、自分の意思でサインし、送金もしている。この形が整っていると、外形上は「投資の失敗」に見えます。騙された実感がどれだけ強くても、海外で起きた出来事について日本の捜査機関が動くのは極めてハードルが高い。
しかも勧誘した側の所在が海外です。日本人を騙してきた人間ほど海外に住所を置いています。そのほうが日本人を騙しやすく、詐欺行為を働いても捕まりにくいからです。
壁3 日本の弁護士は現地の代理人になれない
最後に思い浮かぶのが弁護士です。ただ、一般的には日本の弁護士資格で現地の裁判所に立つことはできません。「相談できる機関がない」とは、あなたの代わりに現地で戦う担い手が日本側に用意されていないという意味です。
私のタイの物件で起きたこと
2010年から13年の間、私は積極的に現地に赴き、チャンスがあれば購入してどんどん増やしていこうと考えていました。カンボジアでも購入予定の物件がありましたが、条件が折り合わずに見送っています。
転機となったのはタイの物件が完成した時のことです。業者からは「完成したら賃貸収入がすぐに入ってくるので利回りは年利13%程度は見込んでいる。ローン返済分は賃料収入から充当できる」と聞いていました。
ところが蓋を開けてみれば賃貸稼働はほぼ0。当然収入が無いので毎月多額の持ち出し。売却したくても買い手は全くいないので資産価値ほぼ0という状態になってしまいました。
購入手続きから管理までこの業者のみに依存していたので、自分ではどうする事もできません。誰を頼って良いのか、どこに相談すれば良いのかもわかりませんでした。まさに今この記事を読んでいるあなたと同じ状態です。
私は最終的に損切りして手放しました。インドネシアとタイは為替差益でほぼトントン、フィリピンは売却損で大赤字です。それでも、同じ物件を買った投資仲間には今も保有している人がいて、売りたくても買い手ゼロ、貸したくても借り手ゼロのまま赤字を垂れ流しています。早く決断した人ほど傷が浅いというのが私の実感です。顛末は海外不動産投資について思うことにも書いています。
相談が集中したバンコク郊外の物件
私の物件だけの話ではありません。バンコク郊外の日本人向けコンドミニアムでは、事業主が販売前のセミナーで「過去にこんなにも儲かる可能性のあるコンドミニアムは見た事がない」と豪語していたそうです。蓋を開ければ入居率は1%台で賃料収入はほぼゼロ、管理費とローン支払いで毎月多額の赤字、資産価値もほぼゼロ。しかも事業運営者が替わろうとする局面で、購入者は現地の法律も契約書の中身も理解しておらず、何をしていいのか分からないまま不安な日々を過ごしていました。詳細はタイのコンドミニアム被害者からの相談にまとめています。
実際に起きるトラブルの型
起きることはだいたい決まっています。自分の案件がどれに当たるか確認してください。
- 現地業者の横領
- 建設工事の大幅な遅れ
- 見込み家賃の大幅減少や支払いの遅れ
- 完成前に業者がトンズラ
- 数々の手抜き工事
- 契約書の不備
私自身も、工期が予定通りに進まない、ディベロッパーが倒産する、手抜き工事で工事が止まるという目に遭いました。自分で現地に行って何かをすることが出来ないので、現地の業者にやりたい放題やられます。そもそも日本人向けに販売されている時点で現地価格より相当高値です。詳しくは海外不動産投資案件のトラブルや詐欺被害が非常に多く発生していますを読んでください。
英文の契約書はここを読む
海外不動産投資をされている方は、契約書の一言一句にきちんと目を通していますか。それが英語で書かれていても中国語で書かれていても、契約書というのは一言一句目を通して、投資家にとって不利な内容が少しでも書かれていないかチェックするのが当然です。
ですがほとんどの方は適当に目を通して簡単にサインしています。もっと酷い人になれば、契約書内容を全く見ていない、契約書すらないという方も過去にいらっしゃいました。「契約書に書かれてある事が全て」なのですから、そのチェックを怠って後で騙されるのは当然でしょう。
私が最低限どこを見るかを挙げておきます。
- 準拠法と裁判管轄(どの国の法律で、どこの裁判所で争うのか)
- 家賃保証の主体と期間(誰が、いつまで保証するのか。売主が消えたら誰が払うのか)
- 引渡しの期限と遅延時の取り決め(遅れても業者に痛みが無い書き方でないか)
- 解約と返金の条件(どういう場合に戻るのか。戻らないと書いてあることも珍しくありません)
- 転売の制限(完成前に売り抜ける前提なら、契約上それができるのか)
- 管理会社や事業主が交代したときの扱い(約束が消えないか)
大事なお金を投じているのですから、行政書士や翻訳家に頼んででも、サインする前には絶対にやるべき事です。口頭やセミナーで言われたことは、契約書に書いていなければ存在しないのと同じです。
現地で弁護士を雇うという選択肢の現実
「現地の弁護士に頼めばいい」と考える方は多いです。理屈の上ではそのとおりですが、費用は着手の段階で先に出ていきます。しかも弁護士費用だけでは終わらず、契約書や証拠資料の翻訳費、通訳費、渡航費と滞在費が上乗せされます。国も案件も違えば金額は変わるので、必ず複数から見積もりを取ってください。
一番の問題はその先です。仮に勝っても、相手にお金が残っていなければ回収できません。業者がトンズラしている、事業主が入れ替わっている。こういう状態で判決だけ取っても戻るお金はありません。費用は確実に出ていき、回収は不確実。これが裁判に踏み切れない最大の理由です。
動く価値があるとすれば、購入者が何十人もいて費用を分担でき、相手にまだ資産が残っている場合です。ひとりで、少額で、相手が消えている案件なら費用倒れになりかねません。
すでに買ってしまった人が今日からやること
1.追加の送金を止める。追加費用、名義変更費用、税金、手数料。どんな名目でも、状況が説明できないうちは払わない。トラブル後の追加請求は傷を広げるだけです。
2.契約書と入金記録を全部そろえる。売買契約書の原文、パンフレットやシミュレーション資料、送金控え、領収書。原文が無いなら取り寄せから始めてください。
3.勧誘のやり取りを保全する。誰に何と言われて買ったのか。メール、LINE、セミナー資料、録音。今日のうちに時系列のメモを作ってください。
4.同じ物件の購入者とつながる。ひとりでは何もできませんが、まとまれば現地に声を出せますし、費用も分担できます。
5.損切りの線を決める。毎月いくら持ち出し、あと何年払い続けるのかを紙に書き出す。回収の見込みが無いなら、赤字を垂れ流す期間を短くするほうが賢明です。
6.税務の扱いは専門家に確認する。海外資産の損失や売却の申告は判断が分かれるので、税理士や税務署に必ず確認してください。
注意点:二次被害と、取り返そうとする心理
権利の買い叩きに注意してください。自分たちが紹介した投資詐欺案件の権利を、二束三文で被害者から買い取って暴利を得ているという情報も届いています。
「取り返せます」という話にも注意してください。減ったお金を取り返そうとする気持ちは、次の案件に飛びつく最大の動機になります。同じ人間が別の案件を持ってくることも珍しくありません。
詐欺師は用意周到です。ありもしない完成予定図面を持ってきたり、市長や政府関係者と称する人間との写真を見せたりします。私自身の経験では、その政府関係者が実は近所のおじさんで、金を握らせてスーツを着せて呼んでいたということがありました。この話はカンボジアのランドバンキングで友人が被害に遭った件にも書いています。
日本人は詐欺に遭ってもシャイなので、追及せずに泣き寝入りしがちです。だからこそ狙われます。誰にも言えずに抱え込むのが、いちばん高くつきます。
英語が読めない、現地に人脈が無いならやるべきではない
英語が読めない、全く理解できないのであれば、海外不動産投資はやらない方がいいです。最低限のスタート時点にも立てていないのに「儲かりそうだから」と言って大事なお金を投じるというのは、私には全く理解できません。
新興国の不動産ファンド、ランドバンキング、プレビルド不動産の類いは、ほとんどが儲からないか大損する可能性があります。ネット上には無責任なブログやサイトがたくさんあります。プレビルド方式の海外不動産、アメリカ原油投資案件、フィリピン商業施設案件、カジノジャンケット案件、タイ鉄鉱石事業案件と、矢継ぎ早に詐欺案件ばかりを案内、紹介しているものもありますが、本人は今でも何食わぬ顔して別の案件、別の事業展開を進めているようです。呆れますね。
断言します。不動産投資に興味があるなら、海外ではなくてまずは日本です。日本語の契約書は読めますし、トラブルに遭っても国内なら手が打てます。
まとめ
海外不動産投資のトラブルは、日本の窓口では解決できません。ここを認めるところからしか次の一手は出てきません。やることは三つ。これ以上お金を出さない。証拠を全部そろえる。損切りの線を自分で決める。そして同じ物件の購入者とつながることです。
トラブルが発生した際に自分では何の解決もできず、騙されて裁判になってもまず勝てない海外不動産投資の一体何がいいのですか。そのリスクを上回るだけのリターンはありませんよ。業者の甘い言葉を鵜呑みにすることなく、正しい知識と情報を持ち、冷静になりましょう。
私が失敗から学んだポリシーは一つです。金融機関の商品か、自分で管理できる不動産や株以外には投資しない。業者任せ、業者依存の投資は、うまくいかなかった瞬間に打つ手が無くなります。
副業・投資の判断に迷ったら
私は数千万円を騙された経験と、大阪府知事認可の不動産会社を20年経営してきた立場から、副業と投資の「本物と偽物」を見極める物差しをお伝えしています。
※販売・勧誘・譲渡のお取次は一切行っていません。







