「海外不動産投資は儲かりますか」という相談を、私は長く受け続けています。答えはずっと同じで、普通の日本人が海外不動産投資でお金を増やすのは極めて難しい。儲からないどころか、損をする可能性の方が高いと考えています。
これは机上の話ではありません。私自身がフィリピン、タイ、インドネシアで投資用のコンドミニアム(現地の分譲マンション)を買って保有し、最終的に全部手放した人間です。数千万円を騙された経験もありますし、大阪府知事認可の不動産会社を20年経営してきた立場から、国内と海外の違いも見てきました。販売会社が説明しない部分まで含めて整理します。
結論:あなたに回ってくる海外物件は「川下の情報」だから
海外不動産投資の何がいいのですかと聞かれて、あなたは何と答えますか。将来の値上がりでしょうか。高い家賃収入でしょうか。そのどちらも、多くの場合は期待できません。海外不動産販売会社に「海外不動産投資をすれば儲かる」と刷り込まれているだけです。東南アジアでも欧米でも構造は基本的に同じです。
もちろん稼いでいる人がゼロではありません。現地の優秀なエージェント(不動産の担当者)と太いつながりを持ち、風上の情報、つまり誰よりも早い一次情報をつかんで、値ごろ感のある物件を現金で買い、数年寝かせて転売益や賃料収入を得る投資家は確かにいます。
ただし、それができるのは手元資金が豊富なごく一部だけです。海外不動産投資セミナーに座っているその他大勢の参加者に流れてくる情報は、基本的に風下・下流・質の低い情報です。言い方はきついですが、これが現実です。
川上の人が買わなかったものが、何段階も人の手を経て、最後に日本人の元へ届く。だから儲からないのです。
理由1:日本人向けに案内される物件は、最初から割高
そもそも日本人向けにアナウンスされている物件(コンドミニアムや戸建て)は価格が割高です。割安で価値の高い物件は現地の投資家がすぐに買い漁ってしまうため、日本人向けに案内が回ってくる物件は、ほぼ全て割高で販売されているという状態になります。
しかも海外不動産は、主に日本人のブローカー(販売の仲立ちをする業者)が日本人に売っています。日本国内の不動産ならインターネットで相場がだいたい分かりますが、海外ではそうはいきません。相場が分からないから、明らかな高値づかみが起こります。現地価格800万円の物件が、1500万円で売られていることもザラです。何も知らない日本人投資家が、ちょっと現地視察をして気が緩み、その場の雰囲気で買ってしまう。私はこのパターンを何度も見てきました。
理由2:「将来ここに◯◯ができる」はほぼ実現しない
販売会社のセールストークは、どこの国でも似ています。
- 物件の前に駅ができる予定だ
- 将来は高速道路が近くにできて、日系企業や工場もたくさん誘致する予定だ
- 東南アジアはこれから伸びる、いまが買いだ
販売会社は必死にこう売り込んできますが、私の経験上、本当にそうなったケースはほとんどありません。新興国とはそういうもので、計画倒れは当たり前の世界です。「将来◯◯ができる予定」は鵜呑みにしないこと。「東南アジアはこれから伸びる、いまが買い」は詐欺師や悪徳不動産屋の常套句だと思っておいた方がいいですね。この手のセールストークは海外不動産投資で「将来この近隣に◯◯ができる」というセールストークに注意にも詳しく書いています。
もう一つ、価格の上がり方そのものが作られている場合があります。特にタイ、カンボジア、フィリピンでは、売れていない案件が多いにもかかわらずデベロッパー(開発業者)が勝手に価値を上げて物件価格を高騰させているケースがあります。実需がないのに価格だけが上がるので、日本人投資家が「東南アジアは不動産価格がどんどん上がっている」と勘違いしてしまうのです。
理由3:プレビルドは、完成しないと全部が消える
東南アジアの不動産販売でよく使われるのがプレビルド方式です。まだ完成していない物件を、土地の状態から分割で払い続け、完成後に残金を払ったりローンを組んだりする売り方ですが、これはもっとたちが悪い。完成までにデベロッパーが倒産すればアウトです。完成予定もいい加減で、数年の遅延は当たり前。しかも販売側は購入者から手数料をすでに徴収済みなので、被害を受けるのは投資家だけという構図になります。
過去のプレビルド案件を振り返ると、最終的に物件が完成しない、建設スピードが遅い、完成後に欠陥だらけ、というものが山ほどありました。結局最後に貧乏くじを引くのは購入者である日本人です。
運よく完成して引き渡しを受けたとしても、そこから先も厳しい。当初聞いていたキャッシュフロー(毎月のお金の出入り)は大嘘で、賃料収入もほとんどなし。毎月の管理費と諸手数料で大赤字。売ろうにも現地の不動産業者を知らないので、最終的に買い叩かれて終了。この流れを本当によく聞きます。
ミャンマーやモンゴルなどで、不動産ファンドとして「権利」に投資させる案件も出回っていました。この手のものは多くを語るまでもなく、早めの資金回収を強くお勧めします。
理由4:買った後のトラブルを、自分の力で解決できない
日本生まれの日本育ち。日本にのみ住所を持ち、日本で働き、日本円でのみ収入を得ている。話せる言語は日本語だけ。このような普通の日本人が、なぜ海外不動産投資を始めようと思うのか。私には正直よく理解できません。
営業トークを信じて買うのは自由です。しかし最悪の場合、現地で大きなトラブルが起きたとき、自分で現地に乗り込んで弁護士やエージェントを雇い、自力で解決できる自信がありますか。できると胸を張って言える人は、ごくわずかでしょう。
実際、海外不動産購入者の大半は英語が全く話せず、現地の法律や不動産の権利関係もほとんど理解していません。というより、契約書すらまともに読まない。紙1枚のペラペラな書類でも「これが契約書です」と販売会社や紹介者に言われれば、そのまま信じてしまいます。
購入後の管理も、販売会社が委託した管理会社(あるいは販売会社自身)に、家賃の授受も送金も建物修繕も全部丸投げになります。そこで起きているトラブルがこれです。
- 入居者から家賃を預かっているはずなのに、振り込んでくれない
- かかってもいない修繕費を何度も請求された
- 実際には賃貸中なのに、空室と言われ続けた
法律も習慣も文化も違う国の不動産に投資するなら、最低限、言葉くらいは話せて当然です。言葉が理解できなければ問題を解決することもできません。何かあった時に自分の力で対処できない投資は、そもそもすべきではないというのが私の考えです。
私の実話:フィリピン・タイ・インドネシアの物件を全部売った理由
私自身、1ドル80円だった円高の時代に、フィリピン、タイ、インドネシアで投資用コンドミニアムを購入し、一時的に保有していました。
結果はどうだったか。出口では為替差益の分は利益が取れましたが、賃貸収入はシミュレーションより下でした。東南アジア不動産には、当初想定していなかったデメリットや不安点が多いと分かったのです。
色々と問題があって悩んでいた時期に、アベノミクスで円安が進みました。私はそのタイミングで全部売却し、撤退しました。つまり私が取れた利益の中身は、不動産としての実力ではなく為替です。ここは正直に書いておきます。
そもそも私が海外不動産に手を出したのは、円高だったからです。当時は1ドル95円以下の水準になればまた買ってもいいと思っていましたが、110円以上の円安ではお得感がなく、リスクを考えると買う価値がないと判断していました。海外不動産は、物件の良し悪しの前に為替という大前提がある。この視点が抜けている人が本当に多いです。
その後、コロナ禍でさらに前提が変わりました。自分が海外に行けない上に、入居者も決まらない。海の向こうに、お金を生まない箱を持っているだけの状態です。自己使用ならともかく、投資用として海外に不動産を持つのは正しい選択肢ではないと私は考えました。またチャンスがあればと思っていましたが、そのまま国内不動産投資へシフトし、現在も海外不動産投資は一切やっていません。
アメリカ不動産も、現地エージェントへの不満が絶えない
東南アジアだけの話ではありません。アメリカ不動産投資も盛り上がる時期が何度もありました。過去にはデトロイト不動産投資詐欺やテキサス油田詐欺など、アメリカ本土を舞台にした詐欺案件もたくさんありましたが、件数としては東南アジアより少なめです。ただ、検索すればアメリカ本土の日本人不動産エージェントはたくさん見つかりますが、コアメンバーやブログ読者、私の周りの投資家に確認する限り、エージェントに不満を持っている人が多いと感じます。管理がずさん、言い方が偉そう、購入後は手のひらを返したような対応。こうしたクレームをよく聞きます。
実際にアメリカ不動産へ投資していた投資家の友人からは、「まあまあ儲かったけど、苦労やストレス、面倒な手続きを考えると二度とやらない。JACKもやめといた方がいいよ」と言われました。その一言で、私は投資するのをやめました。購入前までは優しく、購入後は手のひら返しの粗末な対応。これが海外不動産ブローカーの通り相場です。
「儲からない」で済まない領域:原野商法とランドバンキング
ここまでは、まだ不動産が実在する話です。もっと悪いのは、投資したお金がそもそも戻ってこない領域です。カンボジアやフィリピンでは、ランドバンキング(将来値上がりするとうたって土地の権利を小口で売る手法)と称した原野商法が横行し、日本人が多数被害に遭ってきました。東南アジアでは、詐欺まがいの投資不動産や不動産ファンド案件も横行しています。
私が実際に見聞きしてきた事態がこれです。
- 投資したお金が1円も戻ってこない(販売会社や紹介者と連絡が取れない)
- 運用利回りが年12%と聞いていたのに、実際は誰も入居せず収支はマイナス
- 転売益が見込めると聞いていたのに、買い手が全くいない
- 物件周辺が再開発されると聞いていたのに、一切開発される気配がない
実例は友人がカンボジアランドバンキング詐欺に遭ったと泣きついてきましたが突き放しました、勧誘側の手口はバングラデシュ不動産投資を勧誘する悪徳FPに気を付けろ!、セミナーで「◯年で◯倍」と語る人物の見抜き方は東南アジア不動産投資セミナーで○年で○倍になると勧誘しているペテン師に注意をご覧ください。
日本国内で実績のない不動産会社や、宅建業免許を持っていない会社が開催する海外不動産セミナーには、絶対に出席しないでください。
個人が主催する海外不動産投資セミナーや勉強会などもってのほかです。私の過去の経験上、そういう人たちは詐欺師だと思って間違いありません。
当時、私が国を見ていた基準(2016年ごろの記録として)
参考までに、まだ海外不動産にアンテナを張っていた当時の国の見方も残しておきます。あくまで当時の見立てで、現在の推奨ではありません。
大前提として、遠く自分が訪れたことのない国には手を出さない、見るならアジアだけと決めていました。当時いちばん注目していたのはフィリピンで、教育レベルが高くきれいな英語が話せること、人口が増加していること、当時の1人当たりGDPが7000ドルほどで今後数年のうちに1万ドルを超えるのではと見ていたことが理由です。当時の新政権がマニラ(マカティ)一極集中を分散させたい意向だったため、セブやダバオも面白くなるかもしれないと考えていました。
逆に注目していなかったのがタイです。旅行や移住には適していても、不動産価格は頭打ちで日本人が日本人を騙す詐欺案件も多く、投資には適さない国だと判断していました。カンボジアやミャンマーは時期尚早、ベトナムとインドネシアには注目していました。ただしこれは当時の話で、現在の私は海外不動産投資を行っておらず、国内不動産に軸足を置いています。
では、あなたは今日どうするか
これから話を聞きに行こうとしている方へ、判断基準を並べます。
- 主催者が国内で不動産の実績と宅建業免許を持つか先に確認する。個人主催の勉強会には行かない
- 提示価格が現地相場と比べてどうかを、販売会社以外の情報で確認する。確認できないなら買わない
- プレビルド案件は完成しない可能性を前提に、払った分が戻らなくても生活が壊れないかを先に計算する
- 「将来◯◯ができる予定」「◯年で◯倍」は、根拠の資料を出せるかどうかで判断する
- トラブル時に自分で現地の弁護士やエージェントを動かせるかを自問する。ノーなら手に負えない投資だ
- 為替を確認する。円安局面で買うのは、割高な物件をさらに割高に買うということ
もう一つ。わざわざリスクの高い東南アジアに投資しなくても、日本国内には投資対象になる良質な物件がたくさんあります。東南アジア不動産投資の利回りが10%なら日本でやった方がいいにも書いた通りです。
海外不動産投資セミナーに参加すると分かりますが、参加者にお金の余裕がある人はほとんどいません。ギャンブル的な発想で小資本でお金を増やしたいという方が多い。海外不動産投資は、資産家が分散の一つとして行う「守る投資」であって、資金の少ない人が行う「攻めの投資」ではありません。私の周りの資産のある人たちも、ハワイやオーストラリアで買う人はいますが、東南アジアで買う人はほとんどいません。
まとめ
海外不動産投資が儲からない理由をまとめます。
- 良い物件は現地投資家が先に押さえ、日本人に回るのは川下の情報
- 日本人向け物件は最初から割高で、相場が分からず高値づかみになる
- 実需がないのに価格が吊り上げられている場合がある
- プレビルドは完成しないリスクを購入者だけが負う
- 購入後のトラブルを、言葉も法律も分からない状態では解決できない
- 原野商法やランドバンキングなど、資金が1円も戻らない案件が混ざる
私は実際に買って、保有して、売って、その上でやめました。値上がりも期待できず、インカムゲイン(家賃収入)も期待できないのであれば、無理に海を渡る理由はありません。大損する前に、正しいリテラシーを持っておいた方がいいですよ。
※投資判断はご自身の責任でお願いします。利回りや将来の価格に関する記載は結果を保証しません。海外資産の税務は必ず税理士または税務署にご確認ください。
副業・投資の判断に迷ったら
私は数千万円を騙された経験と、大阪府知事認可の不動産会社を20年経営してきた立場から、副業と投資の「本物と偽物」を見極める物差しをお伝えしています。
※販売・勧誘・譲渡のお取次は一切行っていません。







