投資用のワンルームマンションを持っていて、「売りたいけれど、いくらで売れるのかが分からない」という方に向けて書いています。
私は大阪府知事認可の不動産会社を20年経営してきましたし、自分でも国内の中古ワンルームマンションを複数持っています。だから物件の売買相場も賃料相場も、ある程度は見当がつきます。
この記事でお伝えしたい結論は一つです。突然電話をかけてきた買取業者が出してくる金額は、あなたの物件の相場ではありません。相場よりずっと安い「その業者が買いたい値段」です。
実際に私のところへ来た相談では、業者が650万円と言った部屋が、3ヶ月後に920万円で売れました。まずはその話からお読みください。
650万円と言われた部屋が920万円で成約した実話
ブログ読者の方からワンルームマンションの売却相談がありました。関西圏の主要駅から近く、築13年ほどの綺麗な物件です。
賃貸が長く空いているので売却を検討していたところ、ワンルーム買取業者から突然電話がかかってきて、売却を強く勧められたそうです。
業者から提示された売買相場は650万円だったそうです。
事故物件でもない限り、築13年で主要駅からも近い物件がそんなに安くはないはずなのですが、買取業者の営業は「今後もこの物件を持っていたら大変な事になる。賃料は下がり続けて損失は膨らむ一方なので早めに損切りしましょう」と畳み掛けるように毎日毎日電話をかけてきたようです。
相談者の方も余りにも多い電話に精神が参ってしまい、その業者に売却を持ち掛けようとした時に、娘さんから私のブログを紹介されたそうです。
お話を聞いて、私はその物件の事を知っていましたので、「900万円以上では売れますよ」とお伝えしました。買取業者とは今後連絡を取らず、マトモな不動産会社に頼めば900万円以上では売れるので、話を持って行ってみて下さいとアドバイスしました。
あれから3ヶ月ほど経って相談者の方から報告があり、無事920万円で成約したそうです。
あのまま買取業者の言う事を信用してしまっていたら、300万円近く損をする所でした。まずは娘さんに感謝ですね。
なぜ買取業者の査定は安いのか
買取業者が安い金額を出すこと自体は、仕組み上おかしなことではありません。問題は、その金額を「相場」だと信じ込ませる売り方にあります。
売り方には2つある
ワンルームマンションの売り方は、大きく2つに分かれます。
- 買取/不動産会社があなたから直接買う方法。相手は転売して利益を出すのが目的なので、転売価格から自社の利益と経費を引いた金額しか出せません。その代わり早く現金化できます。
- 媒介(市場で買い手を探す方法)/不動産会社と媒介契約を結び、一般の買主や投資家に向けて売り出してもらう方法。買い手が付くまで時間はかかりますが、成約価格は市場の水準に近くなります。
冒頭の実話で言えば、650万円は買取の金額、920万円は市場で買い手を探した結果の金額です。同じ部屋でも、売り方が違えば270万円の差が出ます。買取業者の提示額は、成約額の7割ほどでした。
安く買って高く売るのが彼らの商売
この構造は昔から変わりません。私は新築ワンルームマンションオーナーはハイエナ買取業者の餌食にならないように注意という記事でも書きましたが、彼らのコンセプトは「安く買い叩いて高く転売する」ことです。
オーナーから買い叩くときは「ワンルームマンションは最悪。このまま持ってると自己破産しますよ」と不安を煽り、買い叩いた物件を自社の顧客に売るときは「節税と将来の年金代わりになります」と賞賛する。この二枚舌が日常的に行われています。少し時間を置いて調べれば分かることなのに、電話攻勢に圧倒されて印鑑を押してしまう方が後を絶ちません。
私が実際に聞いた中で最も酷かったのは、1800万円で買った新築ワンルームマンション3件を、買取業者が1件当たり600万円で買い取ったという話です。わずか築5年でですよ。後で調べたら、その方が所有していた物件の売買相場はまだ1200万から1300万ありました。詳しくは新築ワンルームマンションを買ったばっかりに不動産業者から喰い物にされた悲しき被害者に書いています。
今日から使える判断基準
電話やDMで向こうから買い取りを持ちかけてきた業者に、そのまま売らない。査定額を聞いたら「検討します」とだけ答えて、いったん電話を切る。相場を自分で調べてからでも遅くはありません。
ワンルームマンションの売却相場を自分で調べる方法
相場は、専門家でなくても大まかにつかめます。順番に見ていきましょう。
1. 成約事例を見る
いちばん確かなのは、実際にいくらで売れたかという成約価格です。不動産会社が使う指定流通機構(レインズ)の情報のうち、成約価格は一般の方でも「レインズ・マーケット・インフォメーション」で調べられます。国土交通省も不動産の取引価格情報を公表しています。
見るときのコツは、条件を近づけることです。同じ沿線・同じ駅・徒歩分数・築年数・専有面積が近い部屋を並べて、1平方メートルあたりの単価で比べます。売り出し中の広告価格は「売主の希望額」であって成約額ではないので、そこだけを見て判断しないでください。
2. 家賃から逆算して目安を持つ
投資用ワンルームは買主も投資家で、家賃収入と価格の関係(利回り)で判断します。つまり今その部屋がいくらで貸せるかが価格に直結します。同じマンションの募集賃料を調べておくと、査定額が高いか安いかを自分の言葉で問いただせます。
3. 残債とサブリースの有無を先に確認する
ローンが残っていて売却額が残債を下回ると、差額を現金で用意しない限り引き渡しができません。金融機関に残高を確認し、いくらで売れれば清算できるのかを先に把握してください。サブリース契約が付いている場合は、解約の条件や事前通知の期間が売却のタイミングを縛ることがあります。
査定の取り方|3社から5社の相見積もりが基本
相場の当たりをつけたら、査定を取ります。ここで手を抜くと、冒頭の650万円のような数字を「相場」だと思い込まされます。
- 電話をかけてきた業者1社だけで決めない。3社から5社に依頼して比べる
- 買取の金額と、市場で買い手を探した場合の想定価格を、両方出してもらう
- その金額の根拠になった成約事例を、書面で見せてもらう
- 売却にかかる費用(登記費用、精算金など)と手取り額を出してもらう
- 「今日中なら」「この金額は今日限り」と期限を切る会社は外す
高い金額を出した会社が良い会社とは限りません。根拠を説明できる会社が良い会社です。事例も理由も示さず数字だけを言う担当者は、その時点で候補から外して構いません。
売却の流れ|査定から引き渡しまで
実際の手順は、おおむね次のようになります。
- 1. 資料をそろえる/売買契約書、重要事項説明書、ローンの残高が分かるもの、管理費と修繕積立金の金額、賃貸借契約書
- 2. 相場を調べる/成約事例と募集賃料を確認する
- 3. 複数社に査定を依頼する/買取と市場売却の両方の金額をもらう
- 4. 依頼先を決めて媒介契約を結ぶ/一般、専任、専属専任の3種類がある。専任と専属専任の契約期間は宅地建物取引業法で3ヶ月以内と定められている
- 5. 売り出す/賃貸中の部屋はオーナーチェンジ物件として投資家に向けて売り出す。空室なら実際に住む人にも売れる
- 6. 条件交渉と売買契約/価格、引き渡し日、賃料や敷金の精算を決める
- 7. 決済と引き渡し/残債があれば返済し、抵当権を抹消して名義を移す
冒頭の相談者は、この流れを踏んだ結果、3ヶ月ほどで920万円の成約に至りました。時間を買うのか、金額を取るのか。これを決めるのは業者ではなく、あなたです。
売る前に知っておいてほしい注意点
突然の電話で売買相場を判断しない
ワンルームマンションに限りませんが、突然自宅や携帯に電話してきて不動産売却を迫る業者が提示する売買相場は、著しく低い可能性があります。お客様もちょっと考えてネットで検索すれば分かるのですが、業者はその暇さえ与えないマシンガントークで不安を煽り、契約書にサインさせようとします。
営業電話には「結構です」とだけ伝えて切ってください。「興味がない」「今は忙しい」といった曖昧な返事は、また電話をかけてくる口実になります。しつこい営業や訪問が続くなら、消費者センターや所属の宅建協会に通報しましょう。私の経験上、「宅建協会に通報しますよ」と言えばほとんどは治まります。買取業者の電話営業の実態は投資用不動産を買ったら買取業者からの電話営業に気をつけましょうにも書きました。
大手だからと言って安心してはダメ
大手不動産会社は電話営業で売却を迫る手法は使いませんが、物件情報を一切他社に流さなかったり、職務怠慢な事をする担当者もいるので注意しましょう。自社で買主を見つけたいがために、他社からの問い合わせに応じないという話は昔からあります。
税金と手取りは必ず事前に確認する
売却して利益が出れば税金がかかりますし、損失が出た場合の扱いも人によって違います。売却額がそのまま手元に残るわけではありません。税金の話は必ず税理士か税務署に確認してください。
そもそも買ってはいけない物件を掴まされていないか
フルローンで買った新築ワンルームは、売ろうとしても残債が売却額を上回り、売ることすらできないケースが少なくありません。この構造についてはワンルームマンション投資で自己破産する人が後を絶たない理由に詳しくまとめています。売却を考えている方は、こちらも先に読んでおいてください。
今日やること
- 買取業者からの電話は、その場で結論を出さずに切る
- 売買契約書、残債の分かる書類、管理費と修繕積立金、賃貸借契約書を1ヶ所にまとめる
- 同じ駅、近い築年数、近い面積の成約価格を調べる
- 同じマンションの募集賃料を調べる
- 3社から5社に査定を依頼し、買取価格と市場での想定価格を両方もらう
- 金額ではなく根拠で依頼先を選ぶ
まとめ
ワンルームマンションの売却で損をする人の共通点は、たった一つです。相場を知らないまま、向こうから来た相手に売ってしまう。これだけです。
650万円と言われた部屋が920万円で売れた話は、特別な交渉術の成果ではありません。相場を知っている第三者に一度聞いてみた。ただそれだけで270万円が守られました。
私は数千万円を騙された経験があり、だからこそ「知らないまま判断させられること」の怖さが身に染みて分かります。売り急がず、相場を調べて、複数社に根拠を出させる。それだけで結果は大きく変わります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。売却の可否や金額は物件と時期によって異なります。契約や税務の判断は、宅地建物取引業者、弁護士、税理士など専門家にご確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。
副業・投資の判断に迷ったら
私は数千万円を騙された経験と、大阪府知事認可の不動産会社を20年経営してきた立場から、副業と投資の「本物と偽物」を見極める物差しをお伝えしています。
※販売・勧誘・譲渡のお取次は一切行っていません。
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